ミラー和空「アメリカ人禅僧、日本社会の構造に分け入る 13人との対話」読了 – 2026年4月5日

アメリカ人禅僧、日本社会の構造に分け入る 13人との対話」読了。
以下、マークアップした部分を中心に読後メモ。

長く日本に暮らし、日本に強い愛着を持ちながらも「日本人ではない」立場に置かれ続けてきた著者だからこそ日本人同士では見過ごされがちな前提や暗黙の了解に対して、率直で鋭い問いの積み重ねによって日本社会の輪郭が少しずつ立体的に浮かび上がってくる構成が印象的だった。

特に終盤の「個」という概念に関する議論も興味深く、西洋的な意味での個人は "神との関係" のなかで成立する絶対的な存在として捉えられるのに対し日本における「私」は "他者との関係性" のなかで立ち上がる相対的な存在として理解される。この違いは責任の取り方や意思決定のあり方、さらには社会全体の構造にも大きな影響を与えていると思った。日本社会の曖昧さや協調性の背景には、このような「個」の捉え方の違いがあるのだと考えると多くの現象が一本の線でつながって見えてくる。

本書は日本社会の「強さ」と「弱さ」を切り分けるのではなく、それらが同時に存在し互いに影響し合っている構造を明らかにしていく内容だった。だからこそ単純な批判でも礼賛でもなく、「何を残し、何を変えるべきか」という問いが自然と読者に委ねられる。外からの視点によって照らし出された日本の姿は、ときに耳の痛いものではあるが、それゆえにこそ自分たちの立っている場所を見つめ直すための有効な鏡になっていると感じた。

2026年3月に読んだ本を振り返る

2026年3月は9冊。

3月は車窓から見える外の風景が桜が咲き始めてからは綺麗でついついKindleに目がいかずに車窓に目が奪われることが多かった。そしてそのまま居眠りをすることも。そのわりにはペースを保っていろいろ読めた。

今月のおすすめの一冊

2034 未来予測――AI(きみ)のいる明日」を読んで感じたのはAIの進化を「何ができるようになるのか」という機能の話だけで捉えていると、本質を見誤るのではないか、ということだった。文章生成や画像生成といった分かりやすい進歩はたしかに驚異的だが本書が描いているのは、その先にあるもっと深い変化だ。
仕事観や死生観、人との関係性、そして「自分は何によって生きていると感じるのか」といった感覚そのものがゆっくりと書き換えられていく未来である。

読後に残ったのは「AIが何をできるか」ではなく、「AIのいる時代に自分はどう生きたいのか」という問いだった。そしてもう一歩踏み込むと、これからは「AIとどう生きるか」がテーマになるのだろうと思う。これまでは、悩みを相談したり、支えになってくれる存在は基本的に人間だった。
しかし、24時間寄り添い否定せず、文脈を理解しながら言葉を返してくれるAIが現れたことで人間以外の存在を「伴走者」として持つという選択肢が生まれつつある。

もちろん、AIは中立ではなく、つくり手の価値観を反映するし自分にとって心地よい意見ばかりを返してくれる存在を選び続ければ、考え方は簡単に偏っていく。それでもこの本を読んで思ったのはAIを単なる脅威として捉えるのは少し違うのではないか、ということだった。人間以外にパートナーたりうる存在を持てるようになることは生き方の幅そのものを広げる可能性でもある。

人に頼るのが苦手な人や孤独を感じやすい人にとってはもちろん、自分の考えを整理しながら進みたい人にとってもAIは新しい支えになりうる。そう考えるとAIは人間の役割を奪う存在というよりも、これまでになかった形で人生の選択肢を増やす存在とも言える。

だからこそAI時代に問われるのは、「何ができるようになるか」ではなく「何を自分でやり続けたいのか」という問いなのだと思う。

"AIに任せること" or "自分で引き受けること"。

その線引きをどうするかが、そのまま生き方の輪郭になっていく。
本書は未来予測の形を取りながら、最終的には「あなたはどう生きるのか」と静かに問いかけてくる一冊だった。

今月の読書記録

アメリカ人禅僧、日本社会の構造に分け入る 13人との対話

アメリカ人禅僧、日本社会の構造に分け入る 13人との対話

著者: ミラー和空 / ジャンル: 本 / 発売日: 2015年7月29日

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登録日: 2026年3月28日 / 読み終わった日:

酒好き医師が教える最高の飲み方 (日経ビジネス人文庫)

酒好き医師が教える最高の飲み方 (日経ビジネス人文庫)

著者: 葉石かおり / ジャンル: 本 / 発売日: 2023年2月3日

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登録日: 2026年3月28日 / 読み終わった日:

栗山英樹がトップ経営者から引き出した逆境を突破するための金言

栗山英樹がトップ経営者から引き出した逆境を突破するための金言

著者: 栗山英樹 / ジャンル: 本 / 発売日: 2026年1月26日

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登録日: 2026年3月25日 / 読み終わった日: 2026年3月25日

感動の創造 新訳 中村天風の言葉

感動の創造 新訳 中村天風の言葉

著者: 平野秀典 / ジャンル: 本 / 発売日: 2018年11月29日

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登録日: 2026年3月11日 / 読み終わった日: 2026年3月25日

聞き出せる人が、うまくいく。 (単行本)

聞き出せる人が、うまくいく。 (単行本)

著者: 荒木俊哉 / ジャンル: 本 / 発売日: 2026年3月3日

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登録日: 2026年3月8日 / 読み終わった日: 2026年3月11日

「迷わない心」のつくり方

「迷わない心」のつくり方

著者: 稲盛ライブラリー / ジャンル: 本 / 発売日: 2024年11月8日

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登録日: 2026年3月8日 / 読み終わった日: 2026年3月8日

おい点P、動くんじゃねえ! ニガテ民のための算数と数学の本

おい点P、動くんじゃねえ! ニガテ民のための算数と数学の本

著者: とけいまわり / ジャンル: 本 / 発売日: 2025年12月12日

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登録日: 2026年3月5日 / 読み終わった日: 2026年3月11日

2034 未来予測――AI(きみ)のいる明日

2034 未来予測――AI(きみ)のいる明日

著者: 中島聡 / ジャンル: 本 / 発売日: 2026年2月27日

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登録日: 2026年3月5日 / 読み終わった日: 2026年3月5日

すごいアイデア 「尖らせて売る」ビジネス発想の公式 (単行本)

すごいアイデア 「尖らせて売る」ビジネス発想の公式 (単行本)

著者: 今井裕平 / ジャンル: 本 / 発売日: 2025年2月4日

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登録日: 2026年3月3日 / 読み終わった日: 2026年3月3日

2026年の読書記録

「栗山英樹がトップ経営者から引き出した逆境を突破するための金言」読了 – 2026年3月23日

栗山英樹がトップ経営者から引き出した逆境を突破するための金言」読了。

本書は複数のトップ経営者との対談で構成されているが、興味深かったのは、それぞれの業界も立場も異なるにも関わらず、語られている本質が驚くほど共通している点だった。むしろ個別の戦略論よりも、「逆境を突破できる組織やリーダーは何を拠り所にしているのか」という共通構造が浮かび上がってくる内容だった。

まず強く感じたのは、すべての経営者が「覚悟」を起点に意思決定しているということだ。戦略や施策はその後に続くものであり「どこへ向かうのか」「何を実現したいのか」という意思が先にある。この順序が逆転するとどれだけ精緻な戦略でも現場は動かない。言い換えれば逆境においては戦略の巧拙以上に、その戦略をやり切る覚悟の強さが問われているのだと思う。

次に共通していたのは「優しさ」と「厳しさ」を切り離していない点である。人を大切にする、現場を尊重するという姿勢は決して迎合ではない。むしろ本当に組織や個人の成長を願うからこそ必要な場面では厳しい判断や指摘を避けない。この「非情に見える決断を引き受けること」こそが結果的に大きな善につながるという認識が共通していた。

また、情報との向き合い方も特徴的だった。トップであるがゆえに「裸の王様」になり得る前提に立ちバッドニュースをいかに早く正確に掴むかを重視している。立場が上がるほど良い情報しか上がってこなくなる構造を理解し自ら現場に入り、あるいは意図的に不都合な情報を取りに行く。この姿勢が、結果として意思決定の質を担保しているのだと感じた。さらに「準備」というキーワードも繰り返し現れていた。不確実な状況下での決断は常に不安を伴うが、その不安を軽減するのが日々の準備である。考え続けること、書き留めること、自分の言葉で説明できる状態にしておくこと。これらの積み重ねが、いざというときの判断力や胆力を支えている。逆境に強い組織は偶発的に生まれるのではなく、日常の思考と準備の質によって形作られているのだと思う。

もう一つの共通項は「論理と数字」を重視する姿勢だ。
ただしそれは冷徹さの象徴ではなく、むしろ人や組織に対して責任を持つための基盤として扱われている。感情や空気に流されずに意思決定するための拠り所として論理と数字があり、その上で最終的な判断を下している。このバランス感覚が組織の持続的な成長を支えているように見えた。

そして最も根底にあったのは「人は変わる」という前提。どの経営者も人材に対する期待を捨てていない。問い、任せ、失敗させ、そこから学ばせる。このプロセスを通じて人が成長し、その集合として組織が強くなるという考え方が一貫している。制度や仕組みの前に人の可能性を信じる姿勢があることが印象的だった。

これらを総合すると本書に登場するトップたちが実践しているのは、特別な戦略ではなく「原理原則の徹底」だと言える。

  • 覚悟を持って方向を示し
  • 厳しさと優しさを両立し
  • 情報を自ら取りに行き
  • 日々の準備を怠らず
  • 論理と数字で意思決定し
  • 人の成長を信じ続ける

一見すると当たり前のことばかりだが、それを徹底できるかどうかが、逆境を突破できるかどうかの分岐点なのだと感じた。派手な成功事例やテクニックではなく「結局そこに戻るのか」と思わされるような本質の積み重ね。しかしその本質をやり切ることの難しさと重要性を改めて突きつけられる一冊だった。

平野秀典「感動の創造 新訳 中村天風の言葉」読了 – 2026年3月18日

感動の創造 新訳 中村天風の言葉」読了。

中村天風に関して経営者の方だったり直近だと大リーガーの大谷翔平選手がリハビリ中に愛読していたという話であったりと耳にはしていたけれどもどういったバックグランドの方なのかとかどういった思想なのかというのをまずは把握してみたいなと思い、まずはこの本を手にとってみた。

以下、マークアップした部分を中心に読後メモ。

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中島聡「2034 未来予測 – AI(きみ)のいる明日」読了 – 2026年3月13日

2034 未来予測――AI(きみ)のいる明日」読了。

以下、マークアップした部分を中心に読後メモ。

読後メモ

AIはまだ序章でしかないという感覚

  • AIの現在地は「まだ2合目、せいぜい3合目」
  • すでに大きな変化が起きているように見えても、実際には社会実装も制度設計も価値観の更新もこれからが本番という認識
  • いま見えている生成AIの便利さは入口にすぎず、本当に重たい変化はこの先の生活基盤や産業構造の側にやってくる

AIの進化は「機能向上」ではなく死生観の更新にまで及ぶ

  • 故人再現AIやメモリアルボックスの話は、単なる技術トピックではなく人が死者とどう関係を持ち続けるかという話になっていた (これは直近も地上波の番組であった話題だと思う)
  • 日本人が位牌や墓前に向かって故人に語りかけてきた行為の延長として捉える視点には強い説得力があったのだけど、同時に宗教観から見たときにこれはどういう理解になるだろうと考えた。AIは生産性や効率の道具にとどまらず、人間の喪失や祈りにまで入り込んでくるのだということ

「正しさ」だけでは人はAIを受け入れない

  • AIに求められるのは、IQ的な正確さだけではなく、EQ的な寄り添いなのだという指摘が興味深かった。ちょうど似た話を所属している組織の中でもトピックとして出ていた
  • 人間も同じだけれども正しすぎる存在は、ときに人を救うよりも息苦しくさせる。合理的な回答だけを求めているのではなく、自分の矛盾や弱さを受け止めてくれる相手を求めている

AIは最高の相談相手になりうる一方で、中立でも無害でもない

  • 24時間いつでも相談できるAIは、確かに心強い存在になる。これも人間と同じで人格や正義は育った環境や今時点に至るまでの生き方(= AIの場合は学習データや設計思想や運営企業の価値観)に強く規定される。
  • 便利で親しい存在になるほど、知らず知らずのうちに価値観まで預けてしまう危うさがある

エコーチェンバーはSNSより深く、静かに進むかもしれない

  • エコーチェンバー
    • SNSやネット上の閉じたコミュニティで、似た意見の人々と交流し続けることで、自分の意見が増幅・強化される現象
  • 自分を肯定してくれるAIばかりを選ぶ未来は、想像以上に現実味がある。反対意見や不快な指摘を避け、心地よい人格だけを選び続ければ、思考はどんどん閉じていく。
  • SNSの問題が、そのまま「親友」としてのAIに持ち込まれる構図はかなり怖い。

次のプラットフォームは端末ではなく「常時伴走するAI」になる

  • 次のスマホとは何か、という問いに対して、特定のハードウェアではなく24時間寄り添うパーソナルAIアシスタントそのものだとする見立ては腑に落ちた。端末の形ではなく、生活の中心にどのAIが入り込むかが覇権争いの本質になる。
  • なので競争の本丸はデバイスが何であるかというよりかは、人格・接点・継続利用の設計なのだと感じた

便利さの裏側で、生活そのものが商品化される

  • 無料でロボットを配り、家庭内データを集め、最適な広告につなげる構図は非常に生々しい。フリーミアムの延長線上に、家の中の行動や消費の意思決定そのものが収益化される未来がある。便利さを享受するほど、自分の生活が誰かのビジネスモデルの一部になっていく感覚を持っておく必要がある。「タダより高いものはない」。
  • オフトピックだけれども椎名誠の「アドバード」思い出した。

AI時代に人間に残る価値は「文脈を読む力」

  • 相手の家族構成や最近の出来事といった事実はAIが教えてくれる。しかし、その話題を今出すべきか、今日は触れないほうがよいかという判断は人間側に残る
  • 情報量ではなく、文脈に応じてどう差し出すかがコミュニケーション能力になるという整理はとても納得感があった

AI前提の世界では「あえて人がやること」に意味が宿る

  • AIの助けを借りれば誰でも気の利いたことができる世界では、あえて自分で覚えておくことや自分の言葉で伝えることが敬意になる。手書きの手紙や、非効率だけれど直接的な情動の価値がむしろ高まっていく。効率化が進むほど、人間らしい不器用さや手間が持つ意味が逆説的に強くなる。

教育のあり方も「集団最適」から「個人最適」へ動く

  • AIが否定せず、個々の理解度と関心に合わせて伴走することで、学校の意味そのものが変わるという見立ても面白かった。学習の個別最適化が一部の特権ではなく、広く届く可能性がある。
  • 一方で、知識獲得の効率が上がるほど、人と人が同じ場で学ぶ意味をどう再定義するかが問われるとも感じた。

日本の勝ち筋を「完成品」ではなく部品や強みに見る視点

  • 人型ロボット市場で米中が先行する一方、日本は部品メーカー大国として存在感を持ちうるという議論は現実的だった。夢のある完成品競争に乗れなくても、強みのある領域で勝つ戦い方は十分ありうる。
  • 技術立国としての日本を考えるとき、何でも頂点を目指すのではなく、どこで不可欠な存在になるかを見極める視点が重要だと思った。

AIとロボットが仕事を奪う問題は、収入より「生きがい」の問題

  • 労働の8割が代替された社会で本当に深刻なのは、失業率よりも「自分は必要とされていない」という感覚の広がりなのではないだろうか。仕事は収入源である以上に、社会参加や承認や自己定義の基盤。だからこそ、UBIのような経済的補償だけでは社会の安定はつくれず、生きがいの設計が政治や社会の本題になる

AI時代のポピュリズムはより構造的になる

  • 移民ではなく、AIやロボット、それを所有する資本家に怒りが向かうという指摘は重かった。技術の恩恵と痛みの分配が偏れば、社会は簡単に分断される。
  • AI導入の議論は技術論だけでなく、所有と分配と尊厳の問題 として考えなければならない。

それでも最後に残るのは「自分はどう生きたいか」という問い

本書は未来予測の本でありながら、最終的には生き方の本だったように思う。仕事という軸が揺らいだとき、自分は何に時間を使い、何に喜びを感じるのか。AIの進化を外部環境の変化として受け取るだけでなく、自分自身の意味や本物を問い直す契機として読むべき本だった。


AIの進化を技術トレンドとしてではなく、死生観・仕事観・人間関係・国家や社会のあり方まで含めて捉え直しているのが印象的だった。便利になる未来への期待よりも、そのとき人間に何が残るのかを考えさせられる場面が多かった。

結局問われるのは、AIが何をできるかではなく、AIのいる時代に自分はどう生きたいのか、なのだと思う。

2026年2月に読んだ本を振り返る

2026年2月は5冊。

冊数があまりよめなかったのは電車の中でポッドキャストやNewspicksの動画を見てしまっていたところが原因な気がする。ポッドキャスト聞きながらであれば本を読めるだろうという人もいると思うのだけれども、自分はどうしてもそれができない。会話に気が取られてしまって文字を進むスピードが極端に落ちてしまうのだ。

今月のおすすめの一冊

「人が動かないのは能力不足ではなく、動ける環境設計がされていないだけ」という視点から始まり、マネージャーの仕事をかなり実務的に言語化してくれる本。権力やカリスマ性がないのに、なぜか周囲が協力的になり顧客も自然に継続を望む世界が存在し、その中心にあるのがGiver(与える人)というスタンスで、単に精神論ではなく「利他という武器」だと位置づけられていた。損得を超えてまず与える。ただし「与えておしまい」ではなく、相手の内発的な行動を引き出し、相手もまたGiverになっていく連鎖を生むメカニズムが結果としてチームの空気が変えるのだと腹落ちした。

特に著者が「マネージャーの仕事は先回りして道を掃除すること」と表現していた点には共感がとてもあって、誰かを叱咤して走らせる前につまずく石や不機嫌の火種を拾い、メンバーが「ご機嫌に集中できる状態」を用意することと定義していて、これは優しさというよりパフォーマンスの前提条件を整える行動デザインであり、リーダーの責務だと再確認させられた。そしてここからAI前提の世界における話にシフトしていき、本書ではAI時代にこの役割が重くなるとしていた。
定型業務がAIに寄っていくほど、人間に残る価値は「人とうまくやっていく」こと、そして組織の構造変化の中で「経営と現場をつなぐ力」を発揮することが必要となり、マネージャーはミッション・ビジョンを本質的に理解し、現場に翻訳して伝え、現場の声を経営へ返し、その結果をまた現場へ循環させる。そこで必要なのは命令で動かす力ではなく、「この人のもとで働きたい」と思わせて人を惹きつける力だ、という指摘には強く同意。

Giverはまず自分から動き、相手がハッピーになるものを渡す。すると相手も動き出し、幸福度が相互に上がっていく。結局「動く→褒める→次にまた動く」のループを最初に回すのがリーダーの仕事で、その最小単位は挨拶やお礼、情報共有といった小さなGiveにある、というのも現実的です。トラブル時に "Why ではなく "What で問う、誰が悪いではなく何が起きた・何を手伝えるかに集中する、といった具体の作法も、道を掃除する思想の延長線としてつながって見えた。

読後に残ったのは、Giverとは「いい人」の称号ではなく、チームが自走する確率を上げるための設計思想だということ。そしてAIが進むほど管理職の価値は「成果を出す」ももちろんだが、より「人が成果を出せる状態を作り続ける」へ寄っていく、という確信した。

今月の読書記録

プリンシプルのない日本 (新潮文庫)

プリンシプルのない日本 (新潮文庫)

著者: 白洲次郎 / ジャンル: 本 / 発売日: 2006年5月30日

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登録日: 2026年2月28日 / 読み終わった日: 2026年2月28日

80歳、不良老人です。

80歳、不良老人です。

著者: 太田和彦 / ジャンル: 本 / 発売日: 2024年12月20日

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登録日: 2026年2月22日 / 読み終わった日: 2026年2月25日

片手間PR術 取材が絶えない「商店街の小さなたいやき屋」の広報戦略

片手間PR術 取材が絶えない「商店街の小さなたいやき屋」の広報戦略

著者: 辻井啓作 / ジャンル: 本 / 発売日: 2025年12月9日

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登録日: 2026年2月22日 / 読み終わった日: 2026年2月22日

日本経済AI成長戦略

日本経済AI成長戦略

著者: 冨山和彦 / ジャンル: 本 / 発売日: 2026年1月23日

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登録日: 2026年2月14日 / 読み終わった日: 2026年2月14日

The Giver 人を動かす方程式

The Giver 人を動かす方程式

著者: 澤円 / ジャンル: 本 / 発売日: 2026年1月15日

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登録日: 2026年2月7日 / 読み終わった日: 2026年2月7日

2026年の読書記録

白洲次郎「プリンシプルのない日本」読了 – 2026年2月26日

プリンシプルのない日本 (新潮文庫)」読了。

以下、マークアップした部分を中心に読後メモ。

読後メモ

「プリンシプル」とは、綺麗事ではなく“腹の据わり方”

  • 人を好きになる理由が「単純で正常」だというくだりが良い。価値判断がブレない人は、好悪も決断も迷いが少ない。そしてその“感覚”に合理性が伴うから周囲も納得させられる。逆に言うと、理屈が後付けでコロコロ変わる人は、何を言っても軽くなる。「信念」は声の大きさじゃなくて一貫性。

引用しない・人真似しない = 「自分の言葉で責任を取る」姿勢

  • 有名人の言葉を借りない、聴衆受けを狙わず自説を述べる、というのは“炎上しない言い方”とは真逆。でもその中に、皆が見落としている真実が紛れていることがある。
  • 英国人は淀みなく喋る雄弁さに反射的に疑うという。上手さ・流暢さ・スマートさが、必ずしも信用に直結しない世界がある。

民主主義は制度より“ふるまい”から始まる

  • お茶を出してもらったら「ありがとう」。当たり前のことを当たり前に言うのが気持ちいい、という話が強い。民主教育って、投票行動の前に日常の礼節と対等さの体験。身分に関係なく人間的な尊敬を払う、という英国の空気の描写も同じ線上にある。制度輸入より先に、文化として根づく「相互の尊敬」がいる。

「腹芸」の政治への拒否感:国民が知りたいのは "思想信念"

  • 政治は「ハラ」だと得意げに言っているうちに、再建が遅れ、妙な取引が横行する。国民は政治家の腹の内に興味があるのではなく、何を正しいと信じているか(思想信念)を知りたいだけであり、ここを曖昧にすると、言葉が責任を持たない。
  • さらに「評判がよくなりたい」八方美人の指導者批判。好かれる努力が国家の意思決定を鈍らせる、という構図が存在する。

イデオロギーを“暗記”している人への嫌悪

  • イデオロギーは本来、自分の思想が出発点のはずなのに、日本の政治家は本や人の話を鵜呑みにして暗記してしまう。「自分の言葉がない」=プリンシプルがない。だから、情勢が変わると "方針" も "正義" も簡単に変わる。これは政治に限らない。組織でも借り物のスローガンが乱立すると、意思決定の背骨がなくなる。

現実直視と責任感:嫌なことから逃げた瞬間に詰む

  • コメが凶作の不足分を手配していれば…という話は、危機管理の本質が「事後の弁明」ではなく「事前の手当て」にあることを突きつける。政治があるかないかは、こういう所に出る。"難局は容易に乗り切れない。事実は事実として勇気を持って直視直面せよ" この姿勢が一貫している。そして「この国を破産状態に陥れたのも我々の時代だ」「子孫に引き継ぐ責任」という言葉。「逃げずに背負う」という点で美学というより倫理。

国際関係も個人関係も、長続きの条件は「腹を割って話すこと」

  • 永続きする友情は、遠慮なく腹を打ち開けること——ここは対人にも交渉にもそのまま使える。
  • 「弱い奴が強い奴に抑え付けられるのは世の常」と現実を認めた上で、それでも言うべきことを正しく堂々と言え、というメッセージが熱い。言い分が通らないなら、その悔しさを忘れるな。力が足らないからだ。力をつくれ。「悔しさの保管」が、次の行動の燃料になる。

母の死に際しての記述

  • この本において全体的に国や政治に強い筆致の中で、母の死の章が急に個人の弱さを露わにする。「つっかい棒が消えた」「張り合いがなくなった」「後悔のみ」。喪失に負けている記録。この真空地帯は永久に埋まらない、と言い切る潔さもまたプリンシプルっぽい。慰めのための嘘を言わない。

白洲次郎の言う「プリンシプル」は、正論の飾りではなく“自分の言葉で責任を取る背骨”。
空気・評判・腹芸に流されるほど、国も組織も判断を誤り、後始末は次世代に回る。嫌な現実を直視し、言うべきことを言い、力をつける。一点の気魄。

辻井啓作「片手間PR術 取材が絶えない「商店街の小さなたいやき屋」の広報戦略」読了

いつもとは違う感じの本も読んでみようかと辻井啓作「片手間PR術 取材が絶えない「商店街の小さなたいやき屋」の広報戦略」読了。

東京・阿佐谷の商店街にある「たいやき ともえ庵」の店主、自ら実践してきた広報の工夫をまとめた一冊。広告費をかけず“片手間”でできるPRを積み重ねた結果、取材200件超という成果につながった。その根底にあるのは、「良い商品は自然に売れる」という幻想を捨て、本当に美味しいものを作ること以上にそれが美味しいと伝える方が難しいと語る。人は味そのものよりも、情報によって価値を感じるからだ。

メディア露出は新規顧客を呼ぶだけでなく、「流行っている感」を演出し、既存客の評価やスタッフの誇り、さらには採用力や値上げへの耐性まで高める。"広告"と違い、"広報"はお金を払わずに信頼を獲得できる点に本質的な価値がある。だからこそ、地元メディアへの働きかけ、公式サイトやブログでの情報ストック、SNSでの日常発信など、地道な情報発信が重要になる。特別な理論よりも、メディア側の視点を理解し、目に留まりやすい状態を整えること。本書は個人事業主や中小企業を運営する事業者の現場目線でできる“伝える努力”の積み重ねこそが、人気をつくる現実的な戦略であることを教えてくれる。

澤円「The Giver 人を動かす方程式」読了 – 2026年2月6日

The Giver 人を動かす方程式」読了。
以下、マークアップした部分を中心に読後メモ。

読後メモ

「人が動く」チームは、能力より“空気設計”で作られている

  • 権力も特別な才能もないのに、なぜか周囲が自発的に動き、楽しそうに仕事が進む人がいる。そこには「人の動かし方の技術」がある。それが伴っていないときは実は“動ける設計”がされていないだけ、という見立ては痛いが建設的。

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