「日本経済AI成長戦略」読了。
以下、読後のメモ。
DXの延長線上にAI活用があるという見方をはっきり否定し、「DX=業務改革の効率化」と「AX=AIによる業務の根こそぎ代替」は別フェーズだ、と断言するところから始まる。DXはツール導入で既存業務を少し軽くする話に留まりがちだった一方、生成AIはホワイトカラー業務そのものを置き換え、組織構造まで再編してしまう破壊力を持つ。結果として、DXを支えてきたコンサル・SI・クラウド運用・“デジタル人材”といった職能が、構造的に価値を失っていくという逆説が起きる。
残る競争力は何か。
著者は「どう作るか」より「何を問うか」だと言う。プロンプト力とは小手先の言い回しではなく、問いの構造設計そのもの。つまりは前提を置き、切り口を定め、抽象度を揃え、意思決定に必要な形へ出力を整える力であり、経営の設計図を描く力に近い。
AXが進むと情報収集・分析・仮説生成はAIが一瞬でこなすため、組織は「決める」「実行させる」「責任を取る」に収れんし、経営者やリーダーに残る差分は判断の勇気と覚悟になる。意思決定のOSが変わるという指摘は腑に落ちた。
ここでもスマイルカーブの話を目にすることになった。中間的な二次情報処理が薄くなる一方で、上流の「本質的な問いを立てる仕事」と、下流の「現場現物現人で一次情報に触れ即応する仕事」が相対的に価値を持つ。特に感情労働や対面の顧客接点、現場の柔軟な段取りは代替されにくく、ローカル産業・中堅中小企業こそAXの主戦場になる。労働供給制約の日本では生産性向上が賃金上昇の前提であり、AIで“武装した”エッセンシャルワーカーが新しい厚い中間層になり得る、という未来像も提示される。要するに、本気のAXとは「AIを学ぶ」ことではなく、不要な業務を消し、組織と人を再配置し、付加価値の源泉へ集中する構造転換と理解した。
読後に残ったのは、生成AIを活用した技術やどう使うかといった話の議論を超えて「自分は何を問えているか」だった。
